パッチ・アダムスと共に「笑いと愛」に生きる 〜ケアリングクラウン 金本麻理子の挑戦〜

パッチ・アダムスと共に笑いと愛に生きる ケリングクラウン 金本麻理子さん

Laughter and joy are part of the process of healing.
笑いと喜びは、癒やしのプロセスの一部だ

パッチ・アダムス トゥルー・ストーリーのモデルとなった、パッチの言葉だ。

このパッチの言葉どおり、パッチの大きな愛と笑いと喜びで、うつ病から抜け出したのが、パッチとともに世界を飛び回り、日本でもケアクラウンとして20年以上活動している、金本麻理子さん。

一時は、自分の心や身体を傷つけては「死にたい」という言葉を何度も繰り返す日々だった麻理子さんが、どのようにして、パッチのように愛と笑いをとどけるクラウンへと変わり、自らも癒やされたのか。どんな人でも、幸せに生きることができる。そのヒントを探る。

ポッドキャストはこちらからお聞きください。

一本の映画が運命を変える

人生を変える出会いがある。

金本麻理子さんにとって、それは一本の映画との出会いだった。

幼稚園教諭として働いていた30代の時に、彼女自身がうつ状態に陥り、出口の見えない日々を過ごしていた。

そんなある日、病院の子どもたちと遊ぶクラウン(ピエロ)の姿をテレビで見た。それが、ロビン・ウィリアムズ主演の映画『パッチ・アダムス』のCMだった。

すぐに映画館へいった。そこには、病気ではなく「人」を診ることを信念とする医師、パッチ・アダムスの笑いと温かい姿があった。

この人にしか、私を治せない。

映画のラストで「パッチが理想の病院を作り、ボランティアを募集中」というテロップを見たとき、この人に会いたい!麻理子さんの心に生きたいという明かりがともった。

「会いたい」想いが開いた道

しかし、当時はインターネットも普及しておらず、情報を得るのも難しかった。それでも彼女は、願い続け、探し続けた。すると不思議なことに、想いが巡り巡ってつながっていく。

ついにロシアのクラウンツアーにパッチ・アダムス本人が行く。クラウンになれば参加できるという情報を得た。

2003年の11月、スーツケースにありったけの防寒具と、クラウン用のおもちゃを詰め込み、ロシアへ飛び立った。

パッチは身長2メートル近くの大柄な人物。対する麻理子さんは149センチ。パッチは、麻里子さんに近づくと、腰をかがめ、じっと彼女の目を見つめ、こう言った。

今日から君もクラウンだよ。

そして、力強く抱きしめてくれた。

その瞬間、彼女は確信した。

長いトンネルの先に、光が見えた——

金本麻理子(かねもと まりこ)さん
都内私立幼稚園教諭18年、在宅訪問介護士15年を経て、現在はホリステイックコーチ。コミュニケーション講座、プレゼンテーション研修などの講師。 株式会社 OFFICE NEST 代表 Clown one Japan というパッチ・アダムスのクラウン使節団の日本クラウングループの代表を務め、全国の高齢者施設、病院、児童養護施設、被災地などを訪問している。2019年 TEDXNamba登壇 。著書『うつぬけの魔法 赤鼻のクラウンというパッチ・アダムス的生き方』(ユサブル)

初めてのケアリングクラウン

クラウンというと、多くの人はピエロを思い浮かべる。しかし、パッチ・アダムスが創り上げた「ケアリングクラウン」は単なる道化ではない。

人の心に寄り添い、笑いで緊張をほぐし、希望を届ける存在。

それが、ケアリングクラウンの本質なのだ。

医者がクラウンをやっているんじゃない。クラウンが医者をやっているんだ。というパッチ。

Our job is improving the quality of life, not just delaying death.
私たちの仕事は、命を延ばすことだけではなく、人生の質を向上させることだ。

麻理子さんがクラウンとして初めて訪れたのは、病院や施設ではなく、モスクワのレッドスクエア。バスを降りると、そこには銃を持った兵士と観光客がいるだけ。子どもの姿は見えない。

Just Do It!(やってみなはれ!)」とだけ言われ、突然バスから送り出された。

それまでにクラウンとして活動したことはない。何をすればよいのかも分からず、恐る恐る兵士におもちゃを差し出す。

最初は無反応。「撃たれるかもしれない」。

しかし、次第に表情が緩み、一人が笑い出した。その笑いは次々に広がっていった。

笑いは伝染する。

麻理子さんはその瞬間、笑いの持つ力を体感した。

ちなみに、当のパッチはその頃、警察に捕まっていたそうだ。衝撃的なクラウンデビューとなった。

誰かを救うことで、私が救われる

2週間ロシアの病院や孤児院を訪問するうちに、彼女は気づく。泣いていた子どもが笑顔を見せる瞬間、周りの親もふくめて人の心がゆるみ、場の空気が変わる。その経験が、自分自身の心を癒していく。

Helping others is the best way to help yourself.
他の人を助けることが、結局は自分自身を助ける最良の方法なんだ

映画のストーリーを通じて伝えられるメッセージでもあり、パッチ本人の生き方そのものだ。

医療とは、単に病気を治すことではなく、その人の人生に寄り添うこと。

そして、ケアリングクラウンもまた、人の心に寄り添い、笑いを通じて人を癒す存在なのだ。

私は何をやっているんだ。私にも、まだ出来ることがある!」目の前の子ども達が笑顔になるように、その時できることを精一杯やる。

子どもたちを救うんだ!と思ってロシアに来たのに。でも、実は救われたのは私だったんだ。

パッチとの出会いをきっかけに、子どもたちを笑顔にすることで、麻理子さん自身も助けられていた。

笑いの効用

パッチが言うように、笑いは免疫システムを高め、体が病気と戦うことを助ける。

例えば

  • 笑いによるストレス軽減
  • 笑いにより血流が改善、心臓病のリスクを経験する可能性がある
  • 笑いがエンドルフィン(自然な鎮痛剤)の分泌を促進し、痛みの感覚を軽減
  • 笑いにより、脳が活性化し記憶力や学習能力を向上させる可能性

など、笑いと健康についての研究が、国内外で活発になっている。

Humor is an antidote to all ills.
ユーモアはあらゆる病の解毒剤である

笑いとユーモアが、人々の心のあり方を変えていく。

研究によると、子どもは1日に約300回~400回笑う。大人は、1日に約15回~20回しか笑わないという。

あなたは、毎日どのくらい笑っているだろうか?

ロン・ガットマンによる、笑顔に関する研究をユーモアたっぷりに概説しているTED talk。笑顔が寿命を伸ばす、幸せな結婚生活が続くなど、驚く結果だ。

日本での挑戦

麻理子さんは現在、日本でクラウンの文化を広めるため、新たな挑戦を続けている。

2025年11月、日本初のクラウンツアーを開催予定。東京と関西の病院などの施設を尋ねる。他にも、新幹線の一車両をクラウン専用にしたり、気球に乗ったり、花火をしたりと、一般の人とクラウンが交流して、多くのひとへ笑いと愛を届ける予定だ。

日本のクラウンツアーは、発表からわずか2週間で満席となり、世界中から素晴らしいクラウン達が来日する。すでに来年のウェイティングリストもできている。

パッチは、このクラウンツアーを「愛の学校」と呼ぶ。クラウン同士でも愛を渡し合う、愛を教える学校なのだ。

麻理子さんは、クラウンツアーだけが愛の学校ではなく、日常そのものがクラウンツアー、愛の学校だと語る。

そんな彼女の周りには、いつも笑いと愛の笑顔が広がっている。

人生の軸を持つ I make Me!

麻理子さんの人生を変えた、パッチの言葉の一つが、I make Me!だ。自分の人生は、自分で創ることができる。

The most revolutionary act one can commit in our world is to be happy.
この世界で最も革命的な行動は、幸せでいると決めることだ。

キング牧師のI Have a Dreamのスピーチを間近で聞いたパッチが、その時に決めたこと。自分で自分を幸せにする。

以前は、彼氏がピンクが好きといえば、ピンク色の服を選び、彼氏が好きなものを好きと言っていた。

「お前は本当な何がしたいのか?お前の軸はないのか?」

私がしたいこと?言葉の意味が分からない。

その時から、アドラー心理学などを学びながら、自分の人生を創り始め、道を切りひらいてきた

頭のもやもやは、頭のホコリだから、はらえばいい。人生には挑戦が必要。でも、時には前に進めないこともある。そんな時こそ、一歩踏み出してみると、新しい景色が広がるはず。

今年還暦を迎えるという麻理子さんの生き方は、40代・50代の読者にとっても励みになるだろう。

You’re focusing on the problem. If you focus on the problem, you can’t see the solution. Never focus on the problem!
君は問題ばかりに目を向けている。問題ばかりを見ていたら、解決策は見えない。決して問題にフォーカスするな!

あなたも、人生の問題から少し目をそらして、あなた自身の人生をデザインしてみてはどうだろうか。

ケアリングクラウンの活動をもっと知りたい方へ

麻理子の活動やクラウンについて詳しく知りたい方は、彼女のホームページをチェックしてほしい。

笑いと愛の力で、多くの人々に希望を届ける金本麻理子氏の活動が、日本中に広がることを願ってやまない。

金本麻理子さん 

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この記事を書いた人

40代、50代からの成長を支援するメンタルコーチ。後半の人生をより豊かに善く創造する方法を独自の視点で楽しくお伝えします。The Life Coach School 認定マスターライフコーチ。元遺伝子編集研究者の理系女子。コーチングは愛と勇気。

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